日本人が神様の像を持たない理由

世界を旅すると様々なところで
神様の像を見かける。

その像を前にして
人々が祈りを捧げている姿に
私はすごく胸を打たれる。

イタリアに行った時は
教会で十字架像に向かって祈っている人たちを見た。

インドに行った時は
名前はわからなかったけれど
たくさんの神様たちの像がお出迎えしてくれた。

どんな宗教であっても
古くから続いていきた
素晴らしい文化だと思う。

世界には本当に色んな像があるけれど
旅をする度にそんな思い出に浸りながら
海外から日本に帰ってくると面白いことに気づく。

日本には神様の像がないってことに。

もちろん海外からやってきた宗教の建物には
ちゃんと像はある。

でも最も多くの日本人が信仰している
「神道」には神様の像がないということに
ある時気がついた。

私も海外に行くまでは
不思議に思わなかったけど
言われてみたら珍しい文化かもしれない。

神様の像がない理由を
海外の人に説明するときは

「日本人が拝む「神様」とは
「自然」そのものだったから」
と伝えるようにしている。

神道の神様を祀った神社に行って

「どこに神様がいて何を拝めばいいですか?」
と聞くと
「あの山に神様がいてそこに向かって拝みます」
とか
島を指して「あの島です」と言われる。

日本人の信仰の対象である神はずっと「自然」だった。
教祖もいないし教典もない。

自然が神そのものであって
山や島、岩などは神聖な場と考えられてきた。

これが古くから伝わる日本人の
「自然観」であり「宗教観」。

こうした日本人が大切にしてきた考え方は
世界でも非常に珍しいものだと思う。

私が海外から日本に帰ってくると
いつもお出迎えしてくれるのは
豊かで美しい自然の光景。

自然を見つめながら
世界の人々が神様の像にするように
静かに目を閉じて感謝を込めて手を合わせる。

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